「気になる物件を見つけたが、本当に割安なのか分からない」

「募集家賃を決めたいが、近隣の競合物件を毎回調べるのが面倒」

不動産投資では、購入価格や表面利回りだけでなく、周辺の募集家賃、掲載期間、設備、駅距離などを継続的に比較する必要があります。しかし、思いついたときだけ物件ポータルを確認する方法では、値下げや募集終了といった重要な変化を見落としかねません。

そこで役立つのが、不動産の競合調査を「検索」から「定点観測」に変える仕組みです。

この記事では、不動産投資家・大家が、購入候補の比較や賃貸募集の競合分析を半自動化する方法を7ステップで解説します。最初から大規模なシステムを作る必要はありません。まずはスプレッドシートを使い、10件程度の競合物件を週1回記録するところから始めます。

重要

ポータルサイトの情報は募集時点の広告情報であり、成約価格や実際の入居条件とは限りません。また、サイトによっては自動取得が利用規約で制限されています。自動化する前に、利用規約、robots.txt、公式APIの有無、取得頻度、保存・再利用の条件を必ず確認してください。

不動産の競合調査で最初に決める3つの目的

競合調査を始める前に、「何を判断するための調査か」を決めます。目的が曖昧なまま項目を増やすと、データを集めること自体が目的になってしまいます。

1. 購入候補が割高か割安かを判断する

購入前の調査では、主に次の項目を比較します。

  • 売出価格
  • 所在地と最寄り駅
  • 駅からの距離
  • 築年数
  • 構造
  • 専有面積または延床面積
  • 戸数
  • 現況
  • 想定年間家賃
  • 表面利回り
  • 修繕履歴
  • 土地面積
  • 接道状況
  • 用途地域
  • 再建築の可否
  • 掲載開始日
  • 価格変更日

表面利回りは、一般に次の式で計算します。

表面利回り(%)= 年間家賃収入 ÷ 物件価格 × 100

ただし、表面利回りには、管理費、修繕費、固定資産税、保険料、空室損、原状回復費、入居募集費用、借入金の返済などが含まれていません。

最低限、次のような概算も併記すると、表面利回りだけで判断する危険を減らせます。

概算NOI
= 年間家賃収入
- 管理費
- 修繕費
- 固定資産税
- 保険料
- 空室損
- その他の運営費

概算NOI利回り(%)
= 概算NOI ÷ 物件価格 × 100

NOIは借入金返済前の収益を見る指標です。実際の手残りを確認する場合は、元利返済額や購入時諸費用も別途考慮します。

2. 賃貸募集の家賃と条件を決める

入居募集前の調査では、次の項目が重要です。

  • 募集家賃
  • 管理費・共益費
  • 敷金・礼金
  • フリーレント
  • 仲介会社向け広告料
  • 面積
  • 間取り
  • 階数
  • 方角
  • 築年数
  • 駅距離
  • バス・トイレ別などの設備
  • インターネット無料の有無
  • ペット可、外国籍可などの入居条件
  • 写真枚数
  • 掲載開始日
  • 掲載終了日

家賃だけを比較すると判断を誤ります。たとえば、家賃7万円・礼金0円の物件と、家賃6万8,000円・礼金1か月の物件では、入居者が初年度に負担する金額が異なります。

比較するときは、「月額総額」「初年度負担」「返還されない費用」を分けてください。

月額総額
= 家賃 + 管理費・共益費

初年度負担の概算
= 家賃12か月分
+ 管理費・共益費12か月分
+ 敷金
+ 礼金
- フリーレント相当額

返還されない費用の概算
= 礼金
+ 償却される敷金
+ その他の返還されない初期費用

敷金は退去時に返還される場合があるため、礼金などの返還されない費用とは別に記録します。保証料、鍵交換費、火災保険料などは、掲載ページだけでは正確に比較できないこともあるため、「確認済み」と「不明」を区別します。

3. 市場の変化を早く発見する

定点観測では、単発の価格よりも「前回から何が変わったか」を見ます。

  • 同じ物件が値下げされた
  • 管理費や礼金が変更された
  • フリーレントが追加された
  • 掲載から30日以上経過した
  • 一度消えた物件が再掲載された
  • 同じ建物で募集戸数が増えた
  • 写真や募集コメントが差し替えられた
  • 競合物件の中央値が変化した

ただし、「掲載終了=成約」とは限りません。募集の取り下げ、媒体変更、重複掲載の整理、管理会社の変更なども考えられます。

掲載終了は「成約」ではなく「掲載終了」として記録し、管理会社への確認など別の根拠がある場合にだけ「成約確認済み」とします。

情報の確度を4段階に分ける

競合調査では、数字そのものだけでなく、「何を根拠に記録したか」が重要です。次の4段階で情報の確度を管理すると、広告情報と確認済み情報を混同しにくくなります。

証拠レベル情報の例記録方法
A:公的・契約資料登記事項証明書、売買契約書、賃貸借契約書、公的統計資料名、取得日、該当箇所を記録
B:当事者への確認管理会社、仲介会社、売主、貸主への確認確認日、確認先、回答内容を記録
C:広告情報ポータルサイト、募集図面、物件概要書URL、取得日時、掲載内容を保存
D:推定・AI判定説明文からの設備分類、同一物件候補、想定成約条件推定であることと確認状態を明記

購入判断や家賃変更では、CやDの情報だけで結論を確定させないことが重要です。金額が大きい判断ほど、AまたはBの証拠で確認します。

不動産の競合調査を半自動化する7ステップ

ステップ1:調査対象を1つに絞る

最初は対象を広げすぎないことが重要です。次のように、条件を1文で定義します。

○○駅から徒歩10分以内、築20年以内、
25〜35㎡、1K・1DK、賃貸募集中の物件

購入候補を調べる場合は、次のように定義できます。

○○市内、価格3,000万〜5,000万円、
木造または軽量鉄骨、築25年以内、
表面利回り7%以上の一棟物件

エリア、物件種別、価格帯、築年数を同時に広げると、比較条件が揃いません。最初は10〜30件を安定して追える範囲に限定します。

検索条件には名前とバージョンを付けてください。

検索条件名:○○駅1K賃貸競合
バージョン:v1
適用開始日:2026-07-23
変更理由:初回作成

条件を変更した場合は既存データを上書きせず、v2として開始します。これにより、条件変更による件数の増減を市場変化と誤認するのを防げます。

ステップ2:比較項目をスプレッドシートに作る

最低限、次の列を用意します。

列名記録内容
観測ID1回の取得記録に付ける一意の番号
物件ID同じ物件を追跡するための番号
取得日時情報を確認した日時
情報源ポータル名、管理会社名など
証拠レベルA、B、C、Dのいずれか
物件URL元ページのURL
建物名掲載時の表記どおりに記録
所在地町名までなど粒度を統一
駅距離(分)徒歩分数
築年月可能なら年月で保存
面積(㎡)数値だけを入力
間取り1K、1DKなど
家賃(円)本体家賃
管理費(円)家賃と分離
敷金(円)金額換算できない場合は原文も保存
礼金(円)金額換算できない場合は原文も保存
掲載状態掲載中、掲載終了、再掲載など
前回との差値下げ、条件変更など
確認状態未確認、人が確認済み
備考設備や注意点

数字と文字列を混在させないことがポイントです。「7万円」ではなく、家賃列には 70000 と入力します。単位は列名に持たせると、並べ替えや集計が容易になります。

また、URLだけを保存する方法は避けてください。掲載が終了するとページを確認できなくなる場合があります。取得日時と、その時点で表示されていた主要項目をセットで保存します。

規約上認められる場合は、募集図面や画面の保存先も記録します。ただし、著作物や個人情報を含む可能性があるため、無断公開や再配布は避けてください。

ステップ3:同一物件を識別するルールを決める

同じ物件が複数の会社から掲載されると、単純な件数集計では重複が発生します。

理想的には、次の項目を組み合わせて同一物件を判定します。

住所の正規化値
+ 建物名の正規化値
+ 部屋番号
+ 面積
+ 階数

部屋番号が非公開の場合は、完全な自動判定が困難です。その場合は、「同一候補」として分類し、人が確認します。

よくある表記揺れには、次のものがあります。

  • 1丁目2番3号1-2-3
  • 全角数字と半角数字
  • ABCマンションABCマンション
  • 101号室1階
  • 徒歩5分と徒歩6分
  • 面積25.00㎡と25㎡
  • 建物名のスペースや中黒の有無

自動処理では、住所の記号、全角・半角、余分な空白を統一します。ただし、面積や駅距離が少し違うという理由だけで別物件と決めつけないでください。

実務では、次の3段階に分けると安全です。

一致:主要項目が一致し、同一物件と判断できる
同一候補:一部が一致するが、人による確認が必要
別物件:部屋番号や階数などの差から別物件と判断できる

重複判定の根拠も残します。「AIが同一と判定した」だけではなく、「住所・建物名・面積が一致、部屋番号は非公開」のように記録してください。

ステップ4:まずは週1回、手作業で更新する

いきなり自動取得を始めると、不要な項目まで収集したり、重複判定の誤りに気づかなかったりします。

最初の2〜4週間は、次の手順を手作業で実施します。

  1. 保存した検索条件を開く
  2. 新着物件を追加する
  3. 前回の物件が掲載中か確認する
  4. 家賃、価格、礼金などの変更を記録する
  5. 掲載終了物件に終了日を入力する
  6. 重複候補を確認する
  7. 変化が大きい物件だけ詳しく調べる
  8. その週の判断を「維持」「変更」「追加調査」で記録する

この期間に「本当に判断に使った列」と「一度も使わなかった列」を確認します。使わない列を増やすより、取得日時と変更履歴を確実に残すほうが有効です。

毎週の記録では、前回値を上書きしないでください。同じ物件でも、観測日時ごとに行を追加します。

物件ID:R-001
2026-07-23 家賃70,000円 礼金1か月 掲載中
2026-07-30 家賃68,000円 礼金1か月 掲載中
2026-08-06 家賃68,000円 礼金0円 掲載中

この形式なら、値下げと礼金変更を時系列で確認できます。

ステップ5:利用可能な範囲だけ自動化する

手作業の流れが固まったら、次の順番で自動化します。

レベル1:通知だけ自動化する

  • ポータルサイトの保存検索
  • 新着メール通知
  • 価格変更通知
  • 管理会社からの募集情報メール
  • RSSや公式APIがある場合はその通知

まずは公式に用意された機能を優先します。導入が簡単で、サイト側の仕様変更による影響も比較的小さくできます。

レベル2:メールから一覧表へ転記する

新着メールに物件名、価格、URLなどが含まれている場合は、メール受信を起点にスプレッドシートへ登録します。

登録時には、最低限次の情報をログに残します。

受信日時
メール識別子
物件URL
抽出結果
登録結果
重複判定結果
エラー内容
処理バージョン

抽出に失敗したメールは削除せず、「要確認」に振り分けます。空欄のまま正常登録すると、後から欠損に気づきにくくなります。

レベル3:公式APIや許可されたデータを取得する

APIが提供されている場合は、認証方法、取得上限、再配布条件、保存可能期間を確認します。

自動取得では次の対策が必要です。

  • 取得日時を保存する
  • 元データを変更せず保持する
  • 加工後データと分離する
  • タイムアウト時に再試行する
  • 同じ物件を二重登録しない
  • 取得件数が急にゼロになったら通知する
  • 項目名の変更を検知する
  • 個人情報を不要に保存しない
  • 処理結果を成功・要確認・失敗に分ける
  • 最終成功日時を監視する

サイトのHTMLを直接取得する方式は、規約上の問題だけでなく、画面変更によって突然動かなくなるリスクがあります。実施する場合は、事前に許可範囲を確認し、過度なアクセスを避けてください。

ステップ6:変化を通知するルールを設定する

すべての更新を通知すると、重要な変化が埋もれます。判断に直結する条件だけをアラートにします。

購入候補のアラート例

  • 売出価格が3%以上下がった
  • 想定利回りが基準を上回った
  • 掲載期間が60日を超えた
  • 再掲載された
  • 同一エリアの競合価格中央値を下回った
  • 収益情報や現況が変更された

値下げ率は次の式で計算できます。

値下げ率(%)
=(前回価格 - 今回価格)÷ 前回価格 × 100

賃貸募集のアラート例

  • 競合家賃の中央値が変化した
  • 同じ建物で複数戸の募集が始まった
  • 礼金ゼロやフリーレントが増えた
  • 競合物件が30日以上掲載されている
  • 自分の募集物件より条件のよい物件が追加された

「3%」「30日」「60日」は普遍的な正解ではありません。上記は初期設定例です。物件価格、エリアの流動性、平均募集期間に応じて調整してください。

アラートには、通知条件だけでなく、通知後の行動も設定します。

アラート最初に確認すること次の行動
売出価格が3%以上下落価格以外の条件変更仲介会社へ背景を確認
競合家賃中央値が下落比較対象の入れ替わり類似条件だけで再集計
掲載30日超更新日や再掲載の有無管理会社へ反響状況を確認
同一建物で複数戸募集部屋番号と募集会社建物内の供給増を調査
取得件数がゼロ検索条件と取得処理データ障害か市場変化かを切り分け

ステップ7:月1回、数字と現場情報を照合する

自動化されたデータだけで、購入や家賃変更を決定してはいけません。

月1回、次の情報と照合します。

  • 管理会社へのヒアリング
  • 内見者からの反応
  • 問い合わせ件数
  • 申込数
  • 退去理由
  • 現地の募集看板
  • 同じ建物の空室状況
  • 修繕履歴
  • 周辺の新築供給
  • 融資条件
  • 売買契約書
  • レントロール
  • 登記事項証明書などの公的資料

ポータル上の募集価格は「売主や貸主の希望条件」です。成約価格ではないため、現場情報と組み合わせて判断します。

月次レビューでは、各物件に次のいずれかを付けます。

維持:条件を変えず、次回も観測する
変更:家賃や購入判断などを変更する
追加調査:判断に必要な情報を確認する
除外:比較対象から外す。理由を記録する

競合物件を比較する実践例

たとえば、自分の所有物件が次の条件だったとします。

家賃:70,000円
管理費:3,000円
面積:25㎡
築年数:15年
駅距離:徒歩8分
設備:バス・トイレ別、宅配ボックス

周辺の比較対象を10件集めた結果、家賃中央値が6万9,000円だったとしても、すぐに値下げする必要はありません。

次の順番で確認します。

  1. 管理費を含む月額総額で比較する
  2. 面積1㎡当たりの賃料を比較する
  3. 築年数と駅距離が近い物件に絞る
  4. 階数、方角、設備の差を確認する
  5. 敷金、礼金、フリーレントを比較する
  6. 掲載期間を確認する
  7. 自分の物件の問い合わせ数と内見数を確認する

面積当たり賃料は次の式で計算できます。

㎡単価 = 家賃 ÷ 専有面積

自分の物件の場合は、次のとおりです。

70,000円 ÷ 25㎡ = 2,800円/㎡

ただし、㎡単価だけで優劣は決まりません。狭い住戸ほど㎡単価が高くなりやすいため、面積帯を揃えて比較します。

自分の物件への問い合わせが十分にあり、内見後に申込みへ進まない場合、問題は家賃だけではないかもしれません。室内の状態、写真、初期費用、内見時の印象、申込条件なども確認します。

反対に、問い合わせ自体が少なく、類似物件より月額総額も高い場合は、家賃、管理費、礼金、フリーレントのいずれを調整するか検討します。

値下げとフリーレントを比較する

家賃を毎月2,000円下げる場合、年間収入への影響は次のとおりです。

2,000円 × 12か月 = 年間24,000円の減収

一方、家賃7万円で1か月のフリーレントを付ける場合、初年度の減収は7万円です。ただし、2年目以降の契約家賃は維持できます。

どちらが有利かは、想定入居期間、空室期間の短縮効果、更新の可能性、仲介会社への訴求力によって変わります。単純に「家賃を下げるか」ではなく、契約期間全体で比較してください。

専門家目線で確認したい7つのポイント

1. 平均値だけでなく中央値を見る

一部の高額物件や極端に安い物件が混ざると、平均値が市場感からずれることがあります。サンプル数、平均値、中央値を併記してください。

サンプルが5件しかない場合と50件ある場合では、同じ中央値でも判断の確度が異なります。

2. 比較条件を途中で変えない

今週は徒歩10分以内、翌週は徒歩15分以内というように条件を変えると、時系列比較ができません。条件を変更した場合は、変更日と理由を残します。

3. 欠損値をゼロとして扱わない

礼金の記載がない物件を「礼金0円」と判断してはいけません。

0円
不明
記載なし
取得失敗

これらは別の状態です。

4. AIの推定値と確認済み情報を分ける

AIに物件説明を要約させる場合も、元情報とAIの判定結果を別列に保存します。

元情報:掲載ページに記載された内容
推定情報:AIが分類・要約した内容
確認状態:未確認/人が確認済み

購入判断、法的判断、融資可能性などをAIの出力だけで確定しないでください。

5. 異常値を自動で除外しない

家賃が相場の半額になっていても、入力ミスとは限りません。定期借家、事故物件、短期解約違約金、特殊な入居条件などが設定されている可能性があります。

異常値は削除するのではなく、「要確認」として分離します。

6. 観測単位と物件単位を分ける

「物件数」と「取得した行数」は同じではありません。同じ物件を毎週記録すれば、1物件でも4週間で4行になります。

次の数字を分けて管理してください。

物件数:重複を除いた物件の数
観測数:取得した履歴の総数
掲載数:掲載中と確認できた物件の数
情報源数:確認した媒体や会社の数

7. 推定成約日を確定値として使わない

掲載終了日と実際の申込日・契約日は一致しません。募集期間を分析する場合は、次のように名称を分けます。

掲載確認日
初回掲載確認日
最終掲載確認日
掲載終了確認日
申込確認日
契約確認日

確認できない日付を無理に補完せず、「不明」として残すほうが分析の信頼性を保てます。

よくある失敗と対策

失敗1:対象を広げすぎる

症状: 数百件を収集したが、条件が違いすぎて比較できない。

対策: 駅、徒歩分数、築年数、面積、間取りを固定し、10〜30件から始めます。

失敗2:URLしか保存していない

症状: 掲載終了後、以前の価格や条件を確認できない。

対策: 取得日時、価格、家賃、主要条件、掲載状態を保存します。

失敗3:重複物件を別件として数える

症状: 実際の空室数より多く見える。

対策: 住所、建物名、部屋番号、面積、階数を使って重複候補を抽出します。

失敗4:掲載終了を成約と断定する

症状: 募集期間や成約率を誤って計算する。

対策: 「掲載終了」と「成約確認済み」を別のステータスにします。

失敗5:自動取得の停止に気づかない

症状: データが更新されていないのに、市場が動いていないと判断する。

対策: 最終成功日時、取得件数、エラー件数を監視し、一定時間更新がなければ通知します。

失敗6:集めたデータを意思決定に使っていない

症状: スプレッドシートだけが大きくなり、募集条件は変わらない。

対策: 毎月、「維持」「変更」「追加調査」「除外」のいずれかを各物件に付けます。

失敗7:広告情報と確認済み情報を混同する

症状: 掲載ページの記載だけで、成約条件や法的条件を確定してしまう。

対策: 情報ごとに証拠レベル、取得日、確認状態を記録します。

運用で追うべきKPI

競合調査の目的は、データ件数を増やすことではありません。判断の速さと精度を改善することです。

データ品質のKPI

KPI計算・確認方法初期目標の例
取得成功率成功件数 ÷ 取得対象件数95%以上
必須項目充足率必須項目が揃った件数 ÷ 全件数90%以上
重複率重複件数 ÷ 登録件数継続的に低下
更新遅延公開・通知から記録までの時間24時間以内
要確認件数人による確認が必要な件数処理可能な範囲内
最終成功経過時間最終成功からの経過時間運用周期以内

数値は初期目標の例です。情報源や運用頻度に合わせて調整します。

賃貸募集のKPI

  • 掲載から最初の問い合わせまでの日数
  • 週当たりの問い合わせ数
  • 問い合わせから内見への移行率
  • 内見から申込みへの移行率
  • 募集開始から申込みまでの日数
  • フリーレントを含む実効賃料
  • 競合物件との月額総額差
内見移行率(%)
= 内見件数 ÷ 問い合わせ件数 × 100

申込移行率(%)
= 申込件数 ÷ 内見件数 × 100

問い合わせ件数や内見件数がゼロの場合は、ゼロ除算を避けて「算出不可」とします。

問い合わせが少ない場合と、内見後に決まらない場合では、改善策が異なります。

  • 問い合わせが少ない:価格、写真、見出し、露出を確認
  • 内見につながらない:初期費用、日程調整、競合条件を確認
  • 内見後に決まらない:室内状態、設備、におい、共用部、申込条件を確認

購入調査のKPI

  • 新着から初回判定までの時間
  • 詳細調査へ進めた件数
  • 見送り理由の内訳
  • 価格変更を検知できた件数
  • 現地確認後に前提が変わった割合
  • 想定経費と実績経費の差
  • 想定賃料と成約賃料の差

見送った物件も削除せず、見送り理由を残します。「価格」「融資」「修繕」「賃料想定」「法的条件」などに分類すると、自分の判断基準を改善できます。

再現性を高める検証ログ

競合調査の信頼性を高めるには、成功例だけでなく、対象件数、欠損、重複、エラーも記録します。

検証日:
担当者:
対象エリア:
検索条件名:
検索条件バージョン:
情報源:
取得対象件数:
取得成功件数:
重複候補件数:
欠損件数:
価格変更件数:
掲載終了件数:
人が確認した件数:
発生したエラー:
実施した改善:
判断結果:
次回の確認日:

可能であれば、個人情報や利用規約に配慮したうえで、次の視覚証拠も保存します。

  • 集計表の画面
  • 価格変更前後の記録
  • アラートの通知画面
  • 欠損や取得失敗の一覧
  • 月次レビューの判断欄
  • 検索条件と適用期間

視覚証拠は「うまく動いた画面」だけでは不十分です。取得失敗、重複候補、手作業で修正した箇所も残すと、仕組みの限界を検証できます。

なお、本記事で示した数式、KPI、しきい値は、運用設計の初期例です。特定のエリアや物件で検証した成約実績を示すものではありません。実際の判断では、自分の観測結果と一次資料に置き換えてください。

自動化には限界がある

不動産の競合調査を自動化しても、物件の良し悪しを完全には判断できません。

データだけでは確認しにくい要素があります。

  • 建物や共用部の管理状態
  • 騒音、におい、日当たり
  • 周辺道路の交通量
  • 入居者属性
  • 修繕の必要性
  • 管理会社の対応力
  • 売主や貸主の事情
  • 融資条件
  • 契約上・法令上の問題

また、競合に合わせて家賃を下げれば、必ず早く成約するわけでもありません。値下げによる空室期間の短縮効果と、年間収入の減少を比較する必要があります。

競合調査は「答えを自動で出す仕組み」ではなく、「人が確認するべき変化を絞り込む仕組み」と考えるのが現実的です。

初心者向け4週間の導入プラン

1週目:条件を決めて10件登録する

  • 調査目的を購入または賃貸募集に絞る
  • 検索条件を1文で定義する
  • スプレッドシートを作る
  • 競合物件を10件登録する
  • 取得日時と情報源を記録する

2週目:同じ10件を再確認する

  • 掲載状態を確認する
  • 価格や募集条件の変更を記録する
  • 新着物件を追加する
  • 重複候補を人が確認する
  • 前回値を上書きせず履歴を追加する

3週目:判断に必要な列を絞る

  • 実際に判断へ使った項目を確認する
  • 欠損が多い項目を確認する
  • 自動化してよい処理と、人が確認すべき処理を分ける
  • アラート条件を1〜3個だけ設定する

4週目:月次レビューを実施する

  • 家賃や価格の中央値を確認する
  • 長期掲載物件を抽出する
  • 管理会社や仲介会社へ必要事項を確認する
  • 各物件に「維持」「変更」「追加調査」「除外」を付ける
  • 翌月に自動化する作業を1つだけ決める

今日から始めるための60分チェックリスト

  • 調査目的を「購入」または「賃貸募集」のどちらかに決める
  • エリア、駅距離、築年数、面積、間取りを決める
  • 検索条件に名前とバージョンを付ける
  • スプレッドシートを作る
  • 競合物件を10件登録する
  • 取得日時、情報源、URLを保存する
  • 家賃と管理費を別々に入力する
  • 「不明」と「0円」を区別する
  • 次回確認日を1週間後に設定する
  • 価格・条件の変更欄を作る
  • 情報の証拠レベルと確認状態を記録する
  • 自動化前に情報源の利用条件を確認する

最初の目標は、高度なAI分析でも大量データの収集でもありません。

「同じ条件で、同じ物件群を、毎週確認できる状態」を作ることです。

2〜4週間続ければ、どの項目が意思決定に必要で、どの作業なら安全に自動化できるかが見えてきます。その段階で、通知、転記、重複候補の抽出、変化の検知という順番で自動化してください。